役に立たぬ知識:「朝の食卓」
北海道新聞朝刊の連載コラム「朝の食卓」掲載
一頭の蝦夷鹿が生きて行くのに必要な面積は?
役に立たない知識について書きました。
「役に立たぬ知識」 有明 正之
ご近所さんと世間話をしている時、面白いことを聞いた。
「大昔に聞いた話だから真偽のほどは分からないが」と前置きをして、その人は「エゾシカ1頭が生涯生きていくためには、約50ヘクタールもの山野が要るのだそうだ」。
シカ一頭が生きていける広さなど、知ったところで、一般の人の社会生活には何の役にも立たない。ましてや本人が言うように根拠さえも、よく分からない。
しかし、私はとても興味深く感じ、こんなことを考えた。仮にシカ1頭で50ヘクタールなら、人間が一生暮らしていくには、一体どれだけの土地が必要なのだろうか?
食べ物やエネルギーの供給に必要な面積は? はたまた排出した二酸化炭素の吸収に必要な森林は? そう考えると、かなりの面積が要りそうだ。では、限りある地球という空間で人類が生きていくには、どんな暮らし方をしていくべきなのだろうか。想像は果てしなく広がっていく。
学校や職場では普段、実際に役に立つ知識を身につけようと、みな一生懸命である。だが、時には実生活に役に立ちそうもない知識に思いをはせ、空想をふくらませるのも悪くない。
普通では思いもつかないアイデアや考え方は、そんなところから生まれるのかもしれない。
(パイオニアラボ代表)・釧路
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