クッキー君失踪す
夕方、いつものようにクッキーをつれて裏の牧草地に散歩に行った。
あたりは薄暗くなってきている。しばらく自由に遊ばせていたのだが、突然クッキーは森に向かって駆け出した。たぶんシカのにおいがしたのだろう。大声で呼ぶがシカのにおいに夢中になっているため、耳に入らないらしくそのまま森の中に駆け込んでいってしまった。
しばらく大声で呼ぶがいつまでたっても帰ってくる様子は無い。あたりはいつの間にか真っ暗になっている。
30分ほど待っても帰ってくる様子がないのでさすがに心配になり、捜索隊を派遣することにする。
懐中電灯を手に森の方まで行くがさすがに真っ暗な夜の森に分け入るのはためらわれる。
だいぶ長い時間森の中をのぞき込んだり名前を呼んでいたのだが、時折キツネやシカがガサゴソと動く音がする以外はクッキーが帰ってくる様子は無い。
いったん捜索は打ち切り、うちに帰って夕食を取ってから今後の対策を練ることにする。
クッキーの居ない夕食は、重い沈んだ空気につつまれ、二人はお互いに口には出さないものの、最悪の事態を想像していたようだ。
食後の対策会議では、今夜はこれ以上の捜索をしても無駄である。明朝明るくなってから第二次捜索を開始することにしよう。
と言うのが二人の一致した意見であった。
第二次捜索の具体的な行動予定を確認しているとき、玄関で「ハアハア」と言う音が聞こえた。
思わず裸足のまま外に飛び出すと、そこには疲労困憊したクッキーの姿があった。
シカを追いかけたものの途中で道に迷い、やっとの思いで帰り着くことが出来たのだろう。
失踪から実に3時間後の生還であった。
その後二人と一匹が涙をこらえながら再会の喜びに浸り、しばし抱き合っていたのは言うまでもない。
-完-
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