餅を一俵つければ一人前:「朝の食卓」

季節, 古老の話, 森の暮らし, 執筆・メディア掲載

北海道新聞朝刊の連載コラム「朝の食卓」2010/12/26掲載

2年間続いた北海道新聞朝刊のコラム連載も今回で最後です。

もともとのタイトルは「餅を一俵つければ一人前」だったんですが、長すぎると言うことで「もちをついて一人前」になりました。

毎回、悪戦苦闘の新聞コラム執筆作業でしたが、思いっきり脳みそを使って楽しんだ2年間でした。
自分の考えをわかりやすく正確に伝える良い勉強になりました。 これからも執筆の機会があれば、果敢に挑戦していこうと思っています。

北海道新聞の連載コラム「朝の食卓」に執筆しました。


「もちをついて一人前」 有明 正之

毎年この時期に、もちつきをしている。近所の農家が何家族か集まって、きねと臼でペッタンペッタンともちをつくのだ。最近では見かけることの少ない年末の風物詩だ。本州から移住して来た年に、お世話になっていた農家に誘われて以来、わが家の年中行事になった。

初めのころは要領がわからず、力任せにきねをふるい大汗をかいた。翌日は筋肉痛だ。それに比べると地元の人は手慣れている。私よりずっと年配の人でも無駄な力を使わずに上手にもちをつく。やはり経験の積み重ねは大事だなと感心させられる。

昔はもちを一俵分(約60㌔)つければ一人前と言われたそうだ。臼で言えば約18杯分、かなりの重労働だ。確かにこれだけの仕事をこなせば周りは認めてくれるし、本人の満足感も大きいだろう。

年が明ければ成人式がある。一律にはたちになったから、今日から君は大人ですよと言われても、実感がわきにくい。いっそ昔のもちつきのように「これが出来たら一人前」方式にしたら面白そうだ。

仕事や家事、勉強、趣味など、さまざまな視点で一人前と認められることが出来た時を成人とするのだ。  画一的でない多彩な特技を持った個性ある大人たちが増えれば、多様な価値観を認め合える楽しい社会になって行くに違いない。

(パイオニアラボ代表)・釧路


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